「一体どこに行っちゃったんだろう…ヒノエくん」





熊野にて





あれから一時間。

将臣くんや敦盛さんと待って見たけどヒノエくんは帰って来なかった。

待つことに痺を切らした将臣くんが「探しに行こうぜ」と言って探しに来たけれど…、

「いないな、ヒノエ」

「だな。ったく、待たせて何処いってるんだか」

「ホント何処行っちゃったんだろう」

広い本宮の境内。

三人で手分けして全部回ってみたけれどヒノエくんはいなかった。

どうしたものかと首を捻っていると敦盛さんが口を開いた。

「神子、とりあえずさっきの場所に戻ってみたらどうだろう」

「え?」

「待っていろと言ったからにはヒノエも戻ってくるつもりだったと私は思うのだが…」

敦盛にそう言われて、は嬉しそうに笑った。

「そうですね!戻ってみましょうか」

言って一人歩き出す。

その時敦盛の顔がほのかに紅潮していた事をは気付かなかった。



さっきの場所の近くまで来た時、石の上に座ってる人影があった。

「もしかして、ヒノエくん!?」

走り出そうとした瞬間、真上の木から何かが落ちてきた。

「きゃっ…!?」

「残念、オレはこっちだよ、

「ヒノエ、くん」

落ちてきた、いや、降りてきたのは探していたその人で。

驚きを隠せないは抱き締められている事実に気付くのに数秒かかった。

ハッと気付いて体を離すとヒノエは「おや残念」とふざけた調子で言った。

「びっくりしたぜ?用意が出来て迎えに来てみたら、姫君とそのお供はいないときた」

「ごめんなさい…ヒノエくんが遅いから心配して…」

うつ向いて言うとヒノエはふっと笑って

「気にかけてくれたのかい?嬉しいね。でも、ま、もうちょっと辛抱強く待ってて欲しかったね」


「ごめんなさい、」

が理由を言う間もなく、ヒノエは続けて言った。

「今や龍神の神子の力は有名になってる。熊野には平家だって来てる、それに怨霊もいる。いくらお前が強いって言ったって心配なんだぜ?」

「…うん、ごめんなさい」

しゅんとした様にが謝れば、ヒノエはふっと笑って「いいよ」と言った。

ヒノエが笑ってくれた事が嬉しくてホッとした所でさっき見つけた人は誰だったのか、と思った。

「ねぇヒノエくん、さっきの人…」

「僕ですよ」

「弁慶さん!」

ヒノエくんの後ろから弁慶さんがひょっこりと出てきた。

「弁慶さん、どうしてここに?」

ヒノエの横に並んだ弁慶さんはふふっと笑った。

「ヒノエの“いいもの”の手伝いですよ。一人では大変ですからね」

「いいもの…?そういえばヒノエくん、いいものって何なの?」

するとヒノエくんはまた企みの有りそうな笑顔でこう言った。

「では、今から姫君にお見せ致しましょう。さぁ、お手をどうぞ」

の手を取り、本宮の出口へと向かった。



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