二月ぶりに抱き締めたの体は柔らかくて、あたたかかった。
港のど真ん中、周りに人がたくさんいるのもわかっていた。
それでも、
触れたくて、
触れたくて、
触れたくて、
どうしようもなかった。
ぎゅっと抱きついたままのの背中をあやすようにぽんぽん叩き、
顔をあげたに笑いかけてそのまま横抱きにした。
急な浮遊感に驚いたのかは小さく悲鳴をあげた。
オレの顔を恐る恐るといった感じで見たに片目をつむり、
余裕の顔をしてやるとはおとなしくオレの首に手を回した。
別当屋敷に着くと、女房たちが迎えた。
次々と浴びせられる歓喜の言葉と労いの言葉にオレは生返事を返して、寝室へと向かった。
確かに酷く疲れていた。
何しろに早く会いたいが為に早船を飛ばしたり、通常一日かかる仕事を半日で終わらせたりしたのだ。
それは流石に疲労を感じえない。
だけどそれでも。
この腕の中の愛しいおんなに触れたくて仕方なかった。
真珠の様な涙を拭ってやりたい。
甘美な唇を味わいたい。
オレの心の中はの事でいっぱいだった。
寝室に着き、そっとを下ろしてやる。
目と目を合わせるとの瞳は涙に濡れていて。
そっと頬に触れるとそれを合図にしたようにぼろぼろとしずくがこぼれ落ちた。
「…」
そっと涙を親指で拭ってやる。
けれど涙はとめどなく溢れて、溢れて。
受けとめる様に目元に唇を寄せて海の味のそのしずくを舐め取った。
「ヒノ…」
「会いたかった…」
「ヒノエくん…っ」
ぎゅっと抱きついてきたにオレも抱き締めかえす。
そのまま額、目元、頬、そして…唇。
軽く口付けて、離す。
「、」
ついばむように角度を変えて何度も、何度も。
愛しい甘い唇を味わう。
「、」
「ヒノ…んっ」
「、」
「んんっ、ふ…」
口付けながらは泣いていた。
は決して寂しいとは言わない。
きっとオレを困らせない為なんだろう。
昔のオレだったらきっとその瞬間に冷めた。
けれど、は違う。
愛しくて、愛しくて、骨抜きにされてる。
むしろ今に“寂しい”と言われたら手加減出来ずに愛してしまうだろう。
「ヒノエくん、おかえりなさいっ…」
「ああ、ただいま…」
幼い子供の様にただ口付ける事しかしないで抱き締めあった。
『ヒノエくんって、甘い言葉言う時って“姫君”って呼ぶよね』
『そうかい?』
『うん。でも最近はって呼ぶようになったね』
『んー…、ああ。それはきっと、』
『きっと?』
『の事が本当に愛しいからさ。心からの言葉だからね』
『…っ!』
『ふふっ顔が真っ赤だよ?』
『ヒノエくんの馬鹿!』
『そうだね。オレは馬鹿だから』
『〜〜っ!もう!そういう事じゃないのに!』
「、あいしてる…」
柔らかなあたたかさを感じながら、
心からの、君への愛の言葉。
柔 ら か な あ た た か さ