「ヒノエくん、」
「ん?」
「キス、して」
やきもち
「…?」
「キス、してよヒノエくん」
ほんの少しうるんだ目でがオレを見る。熱が逆流する、熱い。
少し離れて歩いていた距離をが縮めた。
妖艶にオレの首に絡ませる腕、頭を抱えるように腕を回してそのまま目を瞑る。
キスして、それはたった四文字だけれど酷くいとしい言葉だった。
キス、は前に口付けの意味だと聞いた。
閉じられた瞳。意味はこれで間違いない。
けれど。
がこんなことをすることがおかしい。拒んで、理由を聞いてやらなきゃならない。
わかっちゃいる。だけど目の前に桃色の誘惑。しかもすきなおんなからの滅多にない誘いだ。拒めるほどオレは人間が出来てない。
周りに人はいない。理性をなくすには十分すぎる。
手持ち無さたにしていた腕をの腰に回す。びくり、と一瞬震えた。
目を閉じて顔を近付ける。ちゅ、と一瞬触れてそしてすぐ離す。
暫く目を瞑ったままだったがそろりと目を開けた。
「終わ…り?」
「そうだけど?どうしたんだい、姫君」
「だっていつもならこのまま深いのっ…」
言ってからしまったと言わんばかりに赤くなる。慌てて両手で口元を隠すにくすりと一笑いしてオレは木の切株に座った。
「御所望ならその先も喜んでするけど、その前にお前の話を聞かせなよ」
「話、なんて」
「バレバレだよ、姫君。隠し事なんてしない約束だろ?」
「別に隠してたわけじゃ…」
「じゃあいいだろ?さ、おいで」
おずおずと座ってるオレの目の前までが歩いてくる。優しく両手を掴むとそのまま強引に引っ張る。
小さく悲鳴をあげて前のめりに倒れてきたの腰と膝の後ろに素早く手を入れて膝の上に横抱きにした。
「ヒっヒノエくん!」
「これでもう、逃げられないだろ?」
「こんなことしなくても、逃げるつもりなんてないのに…」
憮然とした様子で顔を背けるが可愛くてくつくつと笑いそれで?と話を促した。
「あのね、凄く下らない事なの」
「うん」
「もしかしたらヒノエくん、呆れるかも知れない」
「うん。で?」
「…私、嫉妬したの」
「…え」
「ヒノエくんが…港で女のひとと話してるの見て…」
「けどあれは、」
「わかってる!水軍の誰かの奥さんでしょ?わかってる、けど…」
「…」
「ただ少し、不安になっただけ。
信用してないとか、そうゆうことじゃなくて、ヒノエくんは皆に慕われてて、私より綺麗な人はその中に沢山いて、
本当に私でいいのかなって思っただけなの…」
「…」
「ごめんね、凄く下らないよね、ごめんなさい…」
「本当、お前には参ったよ…」
「…え」
「何処までオレを惚れさせれば気が済むんだい?オレの愛しい姫君」
膝裏に回していた右手をの唇を辿るように這わす。薄い桃色のそれが誘う様に薄く開かれていてそのまま口付けた。
最初は音がするように触れるだけ。小さく名前を呼ぼうとした唇に舌を螺子込んでのと絡ませて、さっき味わえなかった分を味わうかのように荒々しく口付けた。
「つっ…はっ…ヒノ、く…」
「まだ離さないよ、姫」
「ゃっ…もう、苦し…」
「望んだのはだろ?」
「そ…だけど」
「それとも、オレの事、嫌になったのかい?」
唇を離しての耳を甘噛みする。びくんと過敏に反応するに唇は自然と笑みを形作る。
「相変わらず…感度がいいね、」
今度はねっとりと耳を舐めあげる。びくびくんっと反応して真っ赤な顔でオレを見た。
「や…もう、ヒノエくん…」
「呼吸が荒いよ、姫君。堪らなくなっちゃった?」
「もう、何言ってるのよ!」
「でも、これでわかっただろ?」
さらりとの柔らかな髪を掬い取って口付ける。何が?と問い返すに柔らかく笑んで答えた。
「オレがどんなにを愛してるか」
ふふっと笑うとは真っ赤になってしまった。
お前の可愛いやきもちなら幾ら妬いてくれたって構わないんだよ?
愛されてる自信がないならたっぷり愛してやる。
不安になる暇なんてないくらい…ね。