「じゃあオレが登って見てくるよ」
そう言えば、が不安げに顔を歪めた。
「何て顔してるんだい姫君。そんなに心配?」
「だって、梯が腐ってたらどうするの?上に上がった途端ガラガラって足元が崩れちゃったり」
「不吉な事言うね。けど大丈夫だ。もしそうなっても切り抜けられる自信はあるし、いとしの神子姫様が祈ってくれれば加護がついてより安心…ってね」
梯に片手片足を掛けた状態で安心させるようにぱちんと片目を瞑って見せる。
するとまだ微妙に不安げながらもが少し笑った。
「もう…、わかったよ」
「じゃ行ってくる」
大した高さは無かったのでその状態から一気に体を上へと引き上げる。
勢いに乗ってそのまま飛び上がればあっさりと塀の上に到着した。
「へぇ…これはこれは」
「ヒノエくん?大丈夫?」
思わずそこから見える風景に感嘆の声をあげると下からの心配そうな声が聞こえた。
くるりと振り返り、しゃがんで手を差し出す。
「絶景だよ。おいで」
「え?う、うん」
梯を登ろうとしたの手を取って軽く口付ける。
と、一瞬驚いたように顔をあげた。その瞬間を見逃さずに手を引っ張り体を抱きとめる。
「きゃ!?」
小さく声をあげてがしがみつく。引っ張りあげた体を塀の上に着地させて
「…目を開けて御覧?」
と言ってやった。
恐る恐る目を開けたは周囲の光景に大きな目を更に見開いて声をあげた。
「…ぅわあ!凄い…!」
「な?」
「確かに凄いですが、いつまで君はさんと密着してるつもりですか?ヒノエ」
いつの間にか登ってきていた弁慶が胡散臭い笑顔で言った。はっと気付いたようには体を離す。
ちっ…弁慶のヤツ余計な事言いやがって
「残念だね。姫君の柔らかな体、もう少し抱き締めて居たかったのに」
「ばっ馬鹿!ヒノエくんてば何言うのよ!」
「ふふっ」
「おいヒノエ、それセクハラだぜ?」
「せくはら?何のことかわからないね」
将臣はカラカラと面白そうに笑って、弁慶はまた胡散臭い笑顔で笑って、譲と九郎と敦盛は真っ赤になっていた。
…全く純情だね。
「み、神子、そろそろ先へ進まないか?」
耐えかねたのか敦盛がに進言するとは真っ赤に染まった顔のままそうですね、と笑った。
そしてそれをまともに見た敦盛の顔も朱に染まる。
…面白くないね。
「」
「ん?」
振り返った彼女をふわりと横抱きにし塀から飛び降りる。
「きゃ、きゃああ!」
ぎゅっと首に手を回してが抱きついた。
「はい、無事到着」
の顔を覗き込むと少し涙目で睨んだ。
「もう、いきなりびっくりするじゃない!」
「この方が早いだろ?」
横抱きにしていた体を下ろしながら言ってやるとはまだ府に落ちないと言った顔でオレを見る。
…そんな可愛い顔で見られても効果はないんだけどね。
「…ヒノエくんの馬鹿」
「姫君をエスコートするのは騎士の役目だろ?」
立ったままのの前にひざまづいて手の甲に唇を寄せてやる。
また朱に顔を染めたにくくっと笑いその手を引く。
「さ、行くよ神子姫様。龍脈の流れを戻すために」
「…うん!」
直ぐに笑顔になるお前が愛しくて仕方ないよ。
お手をお姫さま
ヒノエ視点で。珍しく別の八葉がでてきましたね。あくまで熊野っ子贔屓ですいません。
よくここまでスクロールしましたね! a