朝日が昇る。
オレはやけに清々しい気分で目を覚ました。

、…

オレの横で小さく寝息を立てている彼女を優しく揺する。

「もう朝だ。…そろそろ着くよ」

「う、ううん…ヒノエ、くん?」

「おはよう姫君」

目を擦りながらが目覚める。
不思議そうにオレの顔を見たと思ったら夕べの出来事を思い出したのか途端に真っ赤になってかけていたオレの上着で顔を隠した。

「…クス、恥ずかしい?」

「…」

「本当に可愛いな、は」

帰したくなくなるよ、と出そうになった言葉を飲み込んで上着から覗くの頭を撫でた。

「さ、早く身支度を済ませておいで。オレは着岸準備してくるから」

「わ、わかった…」

上着から目を覗かせたの旋毛に軽くキスを落としてオレは着岸準備に向かった。

「神子!お帰りなさい」

「白龍!譲くんも」

「神子の願いを叶えに来たよ」

船を降りたら港に譲と白龍が来ていた。白龍が放った言葉には目を見開く。
ああ、とうとう来たか…オレは観念して目を閉じた。

「わ、たしは」

「帰りなよ」

「…え」

「お前のいる世界はここじゃない。帰りなよ」

「何でっ…!ヒノエくん!?」

「お前のいる世界はここじゃないだろ、それとも帰りたくないとでも言うのかい」

「かっ…!帰りたくないわけじゃないよ!でも私は」

「帰りたかったんだろう?向こうでお前の母君も心配してるさ」

「ヒノエくん聞いて!」

「帰れ!もうこの世界に龍神の神子様は必要ないんだ!」

「…!本気、なの…?」

「ああ」

「好きだって言ってくれたのは嘘だったの!?」

「…っ」

大きな瞳から真珠の涙を零すのを見て胸が締め付けられる。例え嘘でも肯定なんて出来やしない。

「…白龍、時空を開いてくれ」

「本当にいいの?ヒノエ…」

「ああ、いいんだ」

「待って白龍…!私納得してない!帰りたいなんて言ってないよ!」

「うるさいね…。お前はそんな聞き分けの悪い女だったかい?」

「!ヒ、ノエくん」

「凛々しい姫将軍だと思ったのはとんだ見当違いだったかな。さあ白龍開いてくれ」

「…わかった」

「ヒノ、エ、くん」

「さよならだ、

「さよ、なら…」

白龍が開いた時空にと譲は飲み込まれていく。
悲しそうな何もかも失った顔のを見てオレは目を背けた。
これで…よかった。はずなのにのあの泣き顔が焼き付いて離れない…