これが悪い夢であればいいと、何度も願った。
それは叶わなくて、覚えているのは身を切るような離別。
永遠に逢うことの出来ない終焉。
燃え盛る火の中で失ってきた、大切な人。
もう一度逢いたくて、それしか考えられずに私は再び時空を越えた。
あの人にもう一度逢いたくて…





願い事ひとつ






「う…うう…」

?」

「う…ん、あ…?」

「どうしたんだい?魘されてたよ、姫君」

薄暗い時空の狭間から光溢れた世界へと飛び出して、聞こえた声に目を開く。
そこにいたのはただ一人会いたかった人。
傍らに座り、優しく髪を撫で付けていた。
どうしよう、泣けてくる。

「…ヒノエくんっ!」

「おっ…と、ふふっ役得かな」

もう一度会えた嬉しさはとどまることを知らなくて、存在を確かめるように抱き
付いた。
触れた体は確かに熱を持っていて、そこに在った。

「ヒノエくんっヒノエくんっ…!」

「ふふ、どうしたんだい?姫君。怖い夢でも見た?」

「うん…見た。とってもとっても怖い夢…」

優しく髪を梳く指先に安心する。
怖い夢ならどんなにか良かっただろう。
でもあれは紛れもない事実であり、現実なのだ。

「…

「?ヒノエく…」

ほんの一瞬、お互いの乾いた唇が触れ合った。
熱くて、優しくて、柔らかい。
ヒノエくんが片目を瞑って額と額を当てた。

「…嫌だったかい?」

「ううん…そんなことないよ…。だって私、ヒノエくんの事だいすきだもん」

「熱烈な愛の告白だね姫君。オレもお前に負けないくらいあいしてる、よ」

言い切るか言い切らないかの内にヒノエくんは涙を吸い取るように目元に口付ける。
くすぐったくて、愛しかった。
そんな彼の腰に腕を回して体重をかける。
ヒノエくんもそれに応えて私の腰に腕を回した。

「ねぇヒノエくん…」

「ん?何だい

「…どこにも行かないで、ね」

「…姫君の仰せのままに。とりあえず今日のオレはお前だけに捧げるよ」

「うん…」

「もうすぐ朝餉の時間だけど、もう少し二人でゆっくりするかい?お姫様」

「うん…もう少しだけ」

「了解。オレとしては願ったり叶ったりだね」

ヒノエくんに体を預けたまま、そっと目を閉じる。
ヒノエくんの優しい声が耳に心地良く響き、
ヒノエくんの香りが私の嗅覚を支配する。
全身でヒノエくんの存在を感じて、何だかまた泣けてきた。
ヒノエくんに気付かれないように、静かに涙を零した。





この先の運命は、まだ知らない。










(遙か3は切ないのが好きなんだなあ私…。切な甘が好物です。遙か3は命懸かっ
てるからかなり切実ですが)