あの続きが、言えたなら。
月を欲しがっても手に入らないことくらい知っていたよ
オレは一人宿の縁側に腰かけていた。
何をするでもなく空を見上げ、柔らかく光る十六夜の月を見つめて彼の女を想う。
本当はずっと、わかってたはずなのに。
彼女は異世界から来た神子姫。
役目を終えればかえっちまう、そんなことくらい。
は月に囚われてる。天衣を纏ってふわりとオレの心を奪って、それでいて遠い。
触れていても遠い、一番近くに居たって遠い。
…お前の心はどこにある?
空に浮かんだ十六夜の月に手をかざす。
月を掴むように拳を作っても月は浮かんだまま。
…まるでの心みたいで。
届かない。
行くな。
行かないでくれ。
…帰したくないんだ。
月を見つめて呟いても空で輝いたまま。
不意に月の中に走り去るの背が見えた気がした。
紫の様な桃色の様な複雑な色をした髪を右に左に揺らし、去って。
小さな少女の背は月の中に消えていく。
まるでオレの心配した通りに月へ帰っていく彼女の幻影。
「くそっ!」
だん!と縁側の木の床を叩いて置いていた酒が溢れた。
倒れた盃に目もくれずオレは相変わらず真上で光り続ける月を見上げた。
どんなに睨んでも月は変わらず光り続けるだけだった。
短すぎとか分けわかんないとか突っ込まないでほしかったり。