心から愛しい人に迎えられる幸せを、きっと君は知らない。









    










「ヒノエくんっ!おかえりなさい!」

「ただいま、

満開の花の様に笑うに、ヒノエの顔は自然と綻ぶ。

慣れた仕草での頬に触れ、ちゅっと触れるだけの口付けをした。

「今日はね、ご馳走なんだよ?」

ふふふ、と笑ってが言えばヒノエは楽しそうに問いかえす。

「へえ?今日は何かあったかな?」

「うーん、内緒、ね?」

唇に人指し指を当てて悪戯に笑う彼女。
いつまでも変わることのない可憐さに、ヒノエは目を細め微笑みを溢す。

「そうかい?教えてくれないなら体に聞こうかな…?」

「えっ」

「ふふ、冗談だよ」

くす、と笑ってヒノエはの背を軽く押し、居間へと向かう。
居間にはきっと愛しい愛しい彼女が作った料理が並べられていることだろう。

「あ、そうだヒノエくん」

「ん?」

「今日は暑かったけど、先にお風呂に入ってさっぱりする?それともご飯食べる?」

ヒノエの目を見ながらがどうする?と問う。
ヒノエは口角を少しあげの耳元に唇を寄せ、囁く。

「どうせなら、姫君を頂きたいね…」

そう言われたは一瞬目を見開いて固まり、その後真っ赤になってヒノエを見る。

「も、もう!何言ってるのよ!馬鹿!」

「ふふ、いつまでたっても慣れないね、は」

そこが可愛いのだけど、とヒノエは一人ごちる。
ぼそっと小さな声で呟いたのを聞こえたのか聞こえなかったかわからないが
が「何?」と真っ赤な顔でヒノエを睨んだ。

「姫君は可愛いな、って言ったんだよ」

くす、と笑ってヒノエが言えばの顔は更に紅潮し、ヒノエの胸をどんどんと叩いた。

「もう!ヒノエくんはそんな事ばっかり!」

くすくす、と楽しそうに笑っての腕を掴む。

「さ、居間へ行こうぜ。お前の作った上手い飯が冷めちまう」

は少し納得しない顔でヒノエを睨む。
それも束の間で「さ、行こうぜ?」とヒノエに言われこくりと頷いた。










「へえ、こりゃあ豪勢だね」

「気に入ってくれた?」

隣に立ったが柔らかく笑ってヒノエに問う。

す、との肩に腕を伸ばし、ヒノエはのこめかみ辺りに口付けた。

「気に入らないわけないさ、サイコーだね、

「ふふっ、ありがとう。さ、座って座って!」

は嬉しそうに笑んでヒノエを座らせ、自分も隣に座した。

「「いただきます」」

二人分の声が重なり二人は食事を開始した。

「本当に今日はすごいな。これだけ作るの大変だっただろ?」

「え?ううん。そんなことなかったよ?」

にっこりと笑んでは言う。

「それにヒノエくん最近疲れ気味だったし…少しでも元気でればなって…」

ヒノエは隣の愛しい女の台詞に、驚愕した。

「それじゃあ今日のご馳走は、オレのため…?」

「う、うん」

照れた様にはにかんで笑うをヒノエは茫然と見る。

下を向いてるが気付かない内に箸を置き、矢も盾もたまらずを抱き締めた。

「ヒっヒノエくん!?」

当然の様には驚いていたけど、そんなことおかまいなしにヒノエはを抱き締める。
腕の力が強くなって、は苦しそうに声を上げた。

「ヒノエくん、苦しいよっ…」

するとの首元に顔を埋めていたヒノエが顔を上げて、の柔らかな唇をなぞった。

「本当にお前は…恐ろしいね」

「え?」

「サイコーの花嫁だよ、は。お前が愛しくて愛しくて、オレの胸は潰れちまいそうだ」

そう言うやいなやヒノエはの柔らかな唇に噛みついた。

むさぼるように口付けて、息が出来ない程に深く、深く。

「愛してる、この世の誰よりも。一生お前だけを愛すと誓うよ」

言いながら、二人の体は床に倒れていった。











「ヒノエくんっ…!」



うわ言の様に呼ぶのは愛しい彼の名前。






っ…!」



熱に侵されたかのように、名前を呼んで。






愛しくて胸が苦しくなる愛しさを、君は知らない。




幸せで流れる涙を、君は知らない。




「大好きだよ」




「愛してる」




囁いた言葉は二人の唇の間で溶けて消えた。