「〜〜〜♪」

今日のはやけに上機嫌で鼻唄を歌いながら洗濯物を干してる。時々口ずさむその歌にどんな意味があるんだか、オレは知らない。
けれどの口から漏れる好きだとか愛してるだとかの詞が聞こえる度にオレはが歌っているその歌にすら嫉妬する。
情けない、格好悪い、そんなオレの醜い部分。
引き出すのは、だけ。










金 朱 雀 恋 歌 











「きゃっ!?ヒノエくんってば驚かさないでよ」

突然後ろからのしかかるとは少し怒ったように振り返る。ごめん、と軽く謝ればもう、と溜め息を吐いた。

「で?どうしたの?」

「いや、姫君が構ってくれないもんだからつい…ね」

「構ってくれないってそんな子供みたいな」

「姫君の前ではいつでも子供だよ、オレは」

「えぇ?そう?」

「ああ。姫君の愛しい唇から紡ぎ出される些細な愛の言葉にすら嫉妬しちまうんだぜ?」

「え?何か言った私?」

「さっき、愛してるって言ってたのは誰だい?」

「愛してる…?ああ、歌ね」

「誰に向けての言葉だい?姫君」

「誰に向けてってわけじゃないよ、大衆向けのラブソング。特定の人に向けて歌ってるわけじゃないんだよ」

「らぶそんぐ…?」

「ああ、えっと、恋の歌、かな?」

「恋の歌を誰にともなく歌うのかい?姫君の世界では」

「うん、そうだね」

「ふーん…面白くないね」

「え?」

どさっと言う音と共に芝生の上に柔らかな体を押し倒す。
薄い桃色の髪は芝生の上に広がり、赤く染まったの頬に背筋がぞくりとした。
ああ、愛しい。

「ちょっ、ヒノエくん!」

「どうしたんだい?姫君」

「どうしたって…こっちのセリフ…っ」

「オレはどうもしてないさ」

「嘘っ…!じゃあ何でいきなり…!」

「姫君が欲しくなった、って答えじゃダメなのかい?」

「ばかっ…!何言ってるの!」

「本当なんだけどね。…面白くないだけだよ」

「何が?」

「姫君の世界では恋の歌を歌うんだろ?誰にともなく」

「?うん」

「将臣や譲もの歌、聞いたのかい?」

「うん」

「だったら尚更だ。オレでさえまだ数回しか聞いてない愛の言葉を他の野郎が聞いてるなんて我慢ならない」

「…ヒノエくん、もしかして嫉妬?」

「…悪いかい?愛しいおんなから愛の言葉を欲しがるのは当然だろう?」

「悪いなんていってないよ。嬉しい」

「嬉しい?」

不思議な事を言うの顔をいぶかしげに見るとはひどく嬉しそうで。
ほんのりと紅潮した顔でオレを見た。ただそれだけで跳ねる鼓動。

「ヒノエくんっていっつも余裕って感じだから…そうやって年相応みたいなヒノエくんが見れるの嬉しい。それに、嫉妬してくれたのもね」

へへ、と照れたように小さく舌を出して笑って。何処までオレの心を縛ったら気が済むんだい?愛しくて仕様がない。

「ったく、お前は本当に可愛いよ…」

そう言って口付けようとすると、駄目!と手で止められた。

「これから買い物行くから、絶対駄目!」

そう言ってするりと腕の中から抜け出た。パタパタと走り部屋に戻りその足でそのまま外へ向かう。
いってくるね、と軽く言ってはあっと言う間にいなくなってしまった。

「逃げられたか…」

だけどそんなとこも愛しいと思うオレはもう末期だ。のこと以外、もう考えられない。