迷宮設定ですがネタバレはしていません。
「あああの!…ま、ま、前から貴方の事を見ていて、そそそその、す、すす、好きなんです!つっ、つつ付き合ってくださいっ!!」
「えっと…ごめんなさい」
「(困った…)」
は学校帰りのホームでよびとめられかれこれ10分くらい問いつめられていた。
周囲の人にはちらちらと好奇の視線を投げられ散々だと溜め息をついた。(もっとも相手は凄い剣幕で気付いていないが)
「ななな何でですか!彼氏でもいるんですか!!」
「(こ、怖い…)だから何度も言ってますけど、あの、私貴方の事知りませんし、知らない方とお付き合いできません」
「じゃあ僕の事しってくださいよ!!なんなら脱ぎますよ!!?」
「えっ!!?」
「はい、そこまで」
流石にこれ以上は危ない、と思った時だった。後ろから聞き慣れた声が聞こえするりと腕が伸びてきた。
それは、
「ヒノエくん!」
「やあ姫君。ご機嫌如何かな?」
「…もう、最悪」
お腹に伸びてきた手でしっかりと後ろから抱き締められ、
こそこそと話していると変質者(もうそう言っていいんじゃないか)がベルトを戻しながら(ホントに脱ごうとしてた!!?)ヒノエにつっかかった。
「何なんだ君は!僕のさんに気安く触るなあっ!!」
「(うわ名前知ってるし…ヤダ…)」
「オレ?オレはの彼氏だけど、あんたこそ何だよ」
「(ヒノエくんっ!!?)」
怒気を含んだ声で彼氏宣言をしたヒノエに驚き振り返るとヒノエがウインクをしながらぼそりと呟いた。
「話合わせて…」
「さん!さん!どういうことなんですか!!?さっき彼氏はいないって…」
「私、彼氏がいないなんて一言も言ってません」
「言ってくれれば僕は!」
「諦めたとでも言うつもりかい?冗談言うなよ。
あんたの様子だと彼氏がいようがいまいが襲いかかりそうだったぜ?はそれを恐れて言わなかったんだよ」
「なっ…!!」
「わかったらさっさと失せろよ。はオレのモノ。
オレのたった一人の愛しい姫君だ。
あんたみたいな下卑に触らせられるような女じゃないんだよ」
「ちょっとヒノエくん、言い過ぎ…」
「しっ、これくらい言っといた方がいいんだ」
あまりの言いように耐えかねてが咎めようとすると人指し指をの唇に当てヒノエは有無を言わさず黙らせた。
そして彼が黙ったのを見計らって腕を少し緩めるとの手をひき後ろに回させるように抱き締めた。
「きゃっ…」
「わかったら失せろって言ってんだろ?恋人同士の甘い時間、これ以上邪魔しないでくれない?」
「くっ…う、う、うわあああああ!」
「うわ…泣きながら帰りやがった…つくづく周りに迷惑な男だねぇ」
ヒノエが呆れるように(事実呆れたのだろうが)溜め息をつきを解放した。
「大丈夫かい?何もされなかった?」
「うん、ヒノエくんのお陰で助かったよ」
「そうか、なら良かったよ。手遅れになる前で」
「あ、そうだよね…。私結構危なかったよね…」
「大分ね。まあ仕方ないか、姫君は道行く男の視線を一挙に集めるくらいの美しい花だからね」
「もう、またそんなこといって。そんなことないのに」
「ふふっ、気付いていないのかい?自然体な空気も纏って更に美しくなってるのに」
「も、ヒノエくんだけだよそんなこと思うの!」
「そうかな?少なくとも八葉に関してはオレと同じ気持ちだと思うけどね」
「えぇ?そんなまさか」
「ま、気付いていない方がオレに取っては好都合だけどね。さ、そろそろ帰ろうか。朔ちゃんも待ちくたびれちまうだろ」
「あっもうこんな時間!?早く帰らないとみんな心配するね」
「オレとしては姫君と二人きりの時間をもう少し堪能したいところだけどね。まあ今日は我慢するさ。行くよ、」
「うん…って、え?」
「手、貸してごらん?また変なやつにあったら嫌だろ?」
「う、うん…」
「ふふっ、素直で可愛いね姫君。ああ、今日は譲が蜂蜜プリン作るって言ってたぜ」
「えっそうなの?楽しみ!」
「じゃあ早く帰ろうか」
「うんっ」
そんなある日の帰り道
水無瀬さんにささげます!