もしこのまま雨が降り続けば、お前はこのまま腕の中に居続ける?
ふわり、手の届かない愛しい愛しい天女様―…
かぎりなく、ふりつづけるのは
「やっぱりヒノエくん、いつもと違うよ」
どうしたの?と憂いの篭った瞳でオレをじっとみる。
その細くてしなやかな薄紫と桃色の間の様な髪に指を差し込んで優しく鋤いてやる。
心配そうに語りかけるの額にこつん、と額を当て目を瞑る。
今この腕の中に在る存在を、なくしたくなどない。
その柔らかな髪を鋤いて、柔らかな手を取っていつまでも共に居られたらどれだけ幸せだろう。
オレを見つめるその碧の瞳も、
雪の様な白磁の肌も、
オレだけのものに出来たなら。
…それが叶わない願いだと、とうにわかっている。
瞑っていた瞼を開け、を見据える。
心配そうに揺らぐその瞳にオレが写っている。
額を離して髪を鋤くのを止め、立ち上がる。
は無言でオレを見る。
「悪かったね、長い間拘束しちまって。そろそろ皆も帰ってくるだろ」
「待って…っ」
踵を返そうとしたオレをの小さな手が止める。
着物の裾を引くその白い手を取って軽く口付けるとは途端に真っ赤になった。
その隙にからかい混じりに声をかけ、オレは先に自室に戻る。
後ろからの照れたような怒ったような声が聞こえたけど聞こえない振りをした。
もう心は、決まった。
ヒノエが返すことを決めた日。