春に狂い 桜に溺れ そして君に











…!凄く綺麗ね…!」

母さんが仕立てた桃色の着物に身を包んだが出てくると、いっせいに共に戦った皆が集まった。
朔ちゃんも感激した様にの手を取る。
始終祝いの言葉を浴びせられて少し疲れた様に見えていたがそうでもなかったのか、も元気にはしゃいでいた。
この広間から見える庭にはの着物と同じ色の桜がまた一枚と茶色の土の上に落ちていた。










「そ、そうかな?ありがとう、朔」

「えぇ、本当によく似合ってますよ。ねぇ九郎?」

「あ、ああ…。まあ、な」

「ほんとほんと!よく似合ってるよちゃん!」

「ああ、神子よく似合っている」

「神子、あなたは本当に綺麗だ…」

「私の神子はいつも綺麗だ!」

「弁慶さん、九郎さん、景時さん、先生、敦盛さん、白龍。皆有難う!」

にこにことは好意を含んだ誉め言葉に返事を返す。
周りにいる共に戦った仲間達はに好意を持っていた。
多かれ少なかれ。
ああもう、肩に手を置いたりすんな。
はオレのモノなんだから。

「気安く触んなよ、弁慶。姫君はオレのだぜ?」

「ヒノエくん!」

するりと後ろからの肩に手を回す。パシンと音を立てて弁慶の手を叩き落とした。
その瞬間、少し驚いた様な顔をした弁慶が少し笑った。

「まさかそんな顔が見られるとは思いませんでしたよ、ヒノエ」

クスクスと弁慶は笑い続ける。
止まらなくなったのか九郎の肩に手をかけて笑いを止めようとしていた。
当然九郎は不思議そうな顔だ。

「そろそろ祝宴を始めましょうか」

朔ちゃんが提案したので皆席につく。
弁慶は相変わらず笑っていた。腹が立つ。

「それでは、とヒノエ殿の結婚を祝って…」

『乾杯!』

そこからは飲めや食えやのドンちゃん騒ぎ。
も進められて少し酒を飲んでいた。頬がほんのりと紅潮している。
にこにこと楽しそうにしているの後ろに回り、さらりと髪を取る。

「どうしたの?ヒノエくん」

「酒はほどほどにしときなよ、姫君」

こめかみ辺りの髪を退けて軽く口付ける。

「ふふ、大丈夫だよ」

そう言っては笑う。普段だったらもう、と軽くいさめるのにそうしない。
酔うとそうなるのか、とオレは一人ごちた。

「そろそろ、お開きにしましょうか」

弁慶が突然そう言った。

「え?もう…ですか?」

はもう、と言うがもうじき亥の刻になる頃だった。

「そうだな、そろそろ帰らねばな」

九郎もそう言ったのでは諦めてまた来てくださいね、と笑った。
続いて他の皆も続々と帰路に付き、広間にはオレとだけになった。

「皆帰っちゃった、ね」

「仕方ないさ」

しゅんとするの前に座り頬に口付ける。それに、とオレは言葉を続けた。

「今日は新婚初夜だし、皆も気を使ったんだろう」

そう告げればの顔は真っ赤に染まった。
未だにこう照れるのが可愛いな、と思いオレはふふっと笑った。

「照れてるのかい?」

「しょ、初夜なんてあんまり関係ないじゃない」

ごにょごにょとが言う。オレは立ち上がりの手を引っ張った。

「そうだね。だけどやっぱり初夜は特別だよ」

ひゃ、と言いながらは立ち上がる。そのまま横抱きにして部屋へと運んだ。










「ヒノエくん…恥ずかしいからあんまり見ないで」

白い布団におろすとは顔を背ける。
薄紫の艶やかな髪が白い布団に広がりなまめかしい。
少し着物をずらして首筋に口付ける。

「ひゃあ…ん」

「ふふ、すっかり感度がよくなったね」

「ヒノエくんの馬鹿…」

抗議に伸ばされた白い手を取って指先に、甲に、腕に、そして唇に。
口付けながら囁いた。

「もう黙って…」






その白磁の肌を赤く熟れさせて。





君は甘い甘い果実。