「…」
「ヒノエくん、」
満天の星が写りこんだ濃い碧の瞳に吸い寄せられるように淡い色の唇を親指でなぞる。
肩に置いていた片手を絹の様な髪に差し込み、絡ませ、ゆっくりと一歩近付くとぎしりと船の床板が鳴いた。
それを合図に唇から白磁の頬へと手を滑らせその唇に焦れるほどゆっくりと、口付けた。
ふ た り で 夜 に 溶 け よ う よ
「んっ…」
が小さく息を漏らす。
その微かな吐息さえも逃したくないと思う、触れる度に貪欲になっていくオレ。
「ふ…」
触れるだけの口付けなのに、は息を漏らす。
そっと目を開けて顔を窺い見れば。
碧の瞳は瞼の奥へと隠され、長い睫毛は微かに揺れていた。真っ白な肌は淡く桃色に色付き、艶っぽく、オレを誘う。
触れただけで、まるで毒の様に全身に愛しさが回ってゆく。
甘美な悦びが背中をぞくぞくと駆け上っていった。そんな気がする。
甘い。
そっと唇を離すとの頬は上気していた。
オレを見上げる瞳がうるんでいて堪らない。
気付けばオレはを滅茶苦茶に抱き締めて深く口付けていた。
戸惑いながら背中に回される腕に、しあわせだと感じる。
の髪の毛がぐちゃぐちゃになっているのにも関わらず頭を抱き締めて唇を貪った。
こんな甘いもの、一度味わったらもう離せない。
「んっ…ふ、ヒノっ…ん!」
息のひとつだって逃がしてなんかやらない。
激しい口付けにの腰が力を無くす。
オレに寄りかかってきたのを見計らってに体重をかける。
ぐらりと倒れる感覚には背に回した腕に力をいれる。
オレは自分の腕をの腰と背中に差し入れて衝撃を吸収してやった。
「…ヒノエくん」
瞳が、不安げに揺れる。
船の床板に散らばった髪の毛すら愛しくて、そっと髪に口付けた。
「…怖いかい?」
髪を指に絡めたまま見つめて聞けばは小さく首を横に振る。少し緊張した顔でにこりと笑った。
「大丈夫だよ、ヒノエくん…だから」
その小さな呟きに、その甘美な呟きに、危うくそのままかき抱いてしまいそうになった。
理性で押しとどめて笑ってみせる。
額にかかったの髪を上げて音を立てて口付けた。
「優しくする…安心して、オレに任せて」
そう言ってやるとは少し緊張がほぐれた顔で頷いた。
それを受けて桃色の衣の合わせを開く。
露になった白磁の肌にそっと頭を埋めた。
―ふたりの夜は、まだまだこれから
(最後までなんて書けませんごめんなさい。これだけでも凄い恥ずかしい。)