「綱吉、」

呟いた言葉は空気に空々しく響いて虚しく消えた。

「何?さん」

それでもそんな小さな言葉は綱吉の耳に入ったらしくボスらしからぬ笑顔で振り返った。
こんな優しそうな人がボンゴレ十代目だと誰が信じるだろうか。私だったら信じられない。

「私をファミリーに入れてもいいの?私は殺しが好きな狂った人間なのよ?もしかしたら全てを裏切って綱吉を殺すかもしれないわ」

何処に行っても私は厄介払いされてきた。どこも私にとって退屈でそしてどうでもよく、簡単に全てを壊してきた。その結果幾つかのファミリーが結託してマフィアの秩序を乱す私を殺そうと計画した。奪われた武器。私に為す術はなくただ死を覚悟して目を閉じた。
そこで助けてくれたのが綱吉だったのだ。(いや正確にはカッコ良く成長したリボーンちゃんだったのだが)綱吉と私は中学のクラスメートでそこそこ仲も良かった。だから本当に驚いた。温和な彼がまさかこんな血で血を洗う殺伐とした世界にいるとは思わなかったからだ。彼らは私を連れて逃げそのままファミリーに置いてくれると言った。

「それでも…」

唐突に綱吉が口を開いた。(本当は私が思考に入り込んで居たから唐突に思っただけなのだが)

「それでも俺は、さんを信じてる。」

ああ、なんと優しく儚い拘束なのだろうか。

「だからここに居ていいんだ」

優しく言われて頷く以外の選択肢は最早私に残されてはいなかった。