、15歳。彼氏なし。趣味は寝ること食べること。
そんな青春とは程遠い自分を理解してはいるものの変えようとはこれっぽっちも思っていない。
何故ならこれが自分だから。
今日も今日とて部屋でお笑い番組を見ながらポテトチップを貪っていた。
すると床でブルブルと震える携帯。
テレビの邪魔をしないようにマナーモードにしてた携帯を片手で開きメールチェック。
すると仲のいいアイツから、
今から会いたい。
とだけ書かれたメールだった。
珍しいなぁと思いながら
いいよー。どこで?
と返せば時間を置かずに返事が来た。
お前んちでいいけ。今下におる
…は?
思わず近くにあったパーカーを引っ付かんで家を飛び出す。
のろのろと動くエレベーターに地団太を踏みながらエントランスにつくとドアに背を預けて携帯を閉じたり開いたりする仁王が目に入った。
「ちょっと」
「…うわ、びっくりした」
もたれていない方のドアを開けながら言うと仁王は少し目を見開いて声に抑揚なくそう言った。
「全然驚いているように聞こえないんだけど。まあいいや、早く入って。寒い」
「そんな格好で降りて来るからじゃろ」
「あんたがいきなり下にいるなんて言うからでしょ」
「そうか、そらすまんかったな」
「…うわ何それ。素直な仁王って気持ち悪い」
「失礼じゃのー」
「だって事実だもん」
「って言うかこんな夜に男入れてええんか」
「そう思うなら来ないでよ。てか仁王なら大丈夫でしょ、よく遊びに来てるんだし」
「…それはそれで何か複雑じゃのー」
「え?何か言った?」
「いや」
「はい、どうぞ」
「…お邪魔しますー」
「あらあらあら仁王くんじゃない!」
「お久しぶりですおばさん」
「相変わらず男前ね〜。ご飯は?食べてないんだったら食べてく?」
「いや、ちゃんと食べたんで大丈夫です」
「お母さん私ら部屋で話しするから」
「あら、じゃ飲み物くらい持ってきなさいよ。仁王くんはの部屋で待ってて」
「いや、そんなお構いなく」
「いいのいいの!子供は遠慮しない、ね?」
「じゃあ…お言葉に甘えて」
「仁王、部屋で待っててね」
「おう」
仁王が私の部屋に入っていったのを見て私は母の後をついていく。
コップにジュースをついでいると母が洗い物をしながら話しかけてきた。
「ねぇ」
「んー?」
「仁王くんと付き合ってるの?」
「ぶふっ!はぁ?」
「だって〜仲いいじゃない?」
「いやいやいや仁王とはただの友達だから」
「ふぅ〜ん。まあ仁王くん相手なら彼氏でも旦那でも安心だから!」
「はぁ?!ないわー」
「色気のない子ねぇもう」
「はいはい色気ないですよー邪魔しに来ないでね!」
母にそう言いやって部屋に戻る。足で部屋を押し開けると仁王がベッドに寄りかかってポテトチップを食べているところだった。
「あー!勝手に食べてる!」
「ん?ああ、おかえり」
「ただいま…じゃなくて!」
「ケチじゃの…はい」
「ったくもう」
仁王からポテトチップを引ったくって仁王の隣に腰掛ける。
持ってきたコーラを渡して話を促した。
「で?何があったの?」
「へ、」
「今日微妙に元気ないもん」
「…流石じゃね」
へら、と力なく笑うと仁王は頭を私の肩に凭れかけた。
そっと持っていたコーラを置いて仁王のコーラも取り上げて向かい合うと仁王の腕がぎゅっと背中に回った。
「…よしよし」
ぽんぽんと背中を叩くと仁王の腕の力が強くなる。苦しくなるくらいだったけどそれでも私は何も言わずに背中をひたすら撫でていた。
まるで猫みたいに小さな背中がやけに愛しく思えてぎゅっと抱きしめた。
「理由は言いたくないなら聞かない」
「…ん」
仁王がそっと体を離してありがとな、と笑った。
その顔はいつもと同じ笑顔だったから安心して私も笑った。
「つーかさー凹むたびにうちに来る癖止めたら?」
「何でじゃ」
「だってそれで前の彼女に誤解されたんじゃない」
「そうじゃけど」
「付き合ってるわけでも幼なじみでもないんだしさ」
「今彼女おらんけ別にいいじゃろ」
「ダメとは言ってないよ」
「それに彼女じゃないけダメじゃ言うんじゃったら彼女になってくれんかの」
「はぁ?」
「が彼女じゃったら絶対長続きするけ、結婚してもいい。のそばが一番安心するんじゃ」
「…」
「ダメかの」
「…しょうがないなー。特別なカンケイって奴になってあげてもいいよ」
「そうか、そんじゃ、カンケイが変わった証」
首に腕が回って寄せられた額に柔らかいものが当たった。
「…?」
額にキスされたと気付いたのは顔をのぞき込まれてから。
一気に顔に血が上って思わず立ち上がって調子に乗んなバカ!!って言ったら仁王は嬉しそうに笑った。
特別なカンケイ。