どうしたって好きな人には会いたいものだ。
自分や相手の何らかの事情や学生にとって避けることの出来ないテストや受験ならまだ仕方ない、そう思える。
だけど自分たちは会う気があるのにも関わらず第三者によりそれを阻まれるのは大変不快でストレスが溜まるということを知った。

もう嫌だ何日になる雲雀と会ってないのは。一週間?もう一週間経った?メールや電話じゃ足りないよ雲雀に会いたいあって話したい。あの切れ長の目を見れたらいいのに。

「じゃあ今日はこれで終わるぞー」

先生の言葉と共に立ち上がる。めんどくさそうに挨拶してちらほらと帰り始める友達を横目で見てダッシュで教室を飛び出した。
こうでもしないとヤツが来る。一週間もこんな生活だ。さすがに疲れる。
帰ってすぐにお風呂に入るのも習慣になった。(ダッシュで帰るから汗かくんだよねー…)

ちゃぷん…
お湯に体を沈める。静かになればなるほど考えるのはやっぱり雲雀のことだ。
ちょうど一週間前、剣道部の持田に告られた。私はその場できっちりと断った。
なのに友達からならいいだろ!?とか勝手に決め付けて持田は毎日やって来た。朝と夕、迎えに来て休み時間も毎回来て。ノイローゼになる。最近は持田の姿を見ただけで目眩が起こりそうになる。

ピーンポーン…

ばしゃんっ!大袈裟に肩が跳ねて水面が揺れた。まさかまさか持田が来たのか。
でもあいつならやりかねない。お母さんに持田だったら入れるなとは言ってるから大丈夫だろうか。

「あらー!いらっしゃい、どうぞあがって?」

おおおおーい!お母さん!?
ちょ、何ナチュラルに入れちゃってんの!?えええ!?何これ風呂から出られない…!

がらり。
脱衣所のドアが開いた音がした。まさか持田か持田なのか!?

コンコン、



「ひっ…雲雀!?」

聞こえてきたのは持田の声なんかじゃなくて雲雀の声だった。そっか、雲雀だからお母さん入れたのか…

「部屋で待ってる。だから早く出てきてよね」

「えっ…う、うん!」

ガラガラピシャン。
脱衣所のドアが閉まる。
と同時に私は慌ててお風呂から上がった。最後に浸かってただけだしもう充分だ。あんまり待たせたら雲雀帰っちゃうかもしれないし。

「雲雀!」

お風呂から上がって部屋に戻ると雲雀はベッドに背を預けて小説か何かを読んでいた。パタンと閉じて早かったね、といいながら小説を横に置く。

「雲雀どうしたの?わざわざうちに来るなんて」

「わかんないの?」

「…何か約束とかしてたっけ」

「…ったからに決まってるでしょ」

「え?何雲雀聞こえないよ」

「だから、」

ピーンポーン
ベルの音が響いて一瞬気が逸れる。

「ちょっと出てー。今手離せないの!」

「えー?はいはい。ごめんね雲雀ちょっと待ってて」

「…」

黙りこくった雲雀を部屋に残して玄関に向かう。雲雀の話を早くききたい一心で確認もせずに玄関を開けた。

「よっ!!」

開けた瞬間自分の愚かさに目眩がした。

「も、持田…」

私服じゃん!可愛いな!」

あ、ほんとに目眩。目の前が歪む。ぐらっと体の重みを支えきれなくなったあたりで肩を乱暴に引かれた。

「ちょっと君、僕の彼女に何ちょっかい出してるの?」

隣から聞こえてきた声は雲雀で胸に押し付けられるように抱き寄せられた。

「な、な、何で雲雀が…!?」

「僕の彼女って知っててにちょっかい出してるならいい度胸だね。咬み殺そうか」

「いっいや知らない!これっぽっちも知らない!」

「ふーん。じゃあ知った所で早く帰ってくれない?邪魔だよ」

「しっしっしっ失礼しました!!」

顔を青ざめて持田は出て行った。雲雀は私を抱き寄せたまま部屋にずるずると引きずって行く。パタンとドアを閉めると同時に雲雀がぎゅうっと抱き締めた。

「ひっひば、」

「何で僕に言わないの。言えば早くあんなやつ追い払ってもっと2人で会えたのに」

「もしかして雲雀…寂しかった?」

「…は僕に会いたくなかったの」

「ううん、会いたかった。寂しかったよ」

「じゃあもうそれでいいよ」

そう言って雲雀は更に強く私を抱き締めた。






もしも君がピンチの時には僕が必ず助けるよ