ブン太を殴った。
殴ったって言うと聞こえが悪いな。
殴ったって言うよりちゅーしたいって言って頬に沿えられた手を叩いただけなん
だけど。私たち二人しかいないこの教室では耳障りなほどその乾いた音が響いた。
「…何で拒否んの?」
若干むっとした顔で私を見る。無理に触れないのがブン太の優しさだ。
「私に触ったらブン太を汚すから」
「はあ?何言ってんのお前。何処が汚ねーの」
「ぜんぶ」
「汚くねーだろぃ」
「汚いよ、醜いよ、ブン太が知らないだけで」
ありえねーと言ってブン太が手を伸ばす。今度は触れる前に叩き落とした。今度こそ機嫌を損ねたらしい。ブン太はむっとして叫んだ。
「ふざけんなテメー!」
「わ、わたしがわるいの?」
「あたりめーだろぃ!馬鹿かお前!」
馬鹿ブンにそんな事言われたくない。
私が目に見えてむっとしたのでブン太は無理矢理手を掴む。嫌だと暴れる私を強引に抱きすくめた。
やめてってば、
言えばブン太は嫌だと言う。
更に力を込めて抱きすくめた。
「が汚いわけない」
そう言って抱き締めてくれるブン太に愛情を感じなかったわけじゃない。
けど愛情よりも自分の醜さを気付かれていない安堵感を覚えていた私はもう、病んでいる。
ぱん、と乾いた音が響いた