「−から、今回は・・・」
「んむ・・・」
ベッドの中で小さく身じろぐ。半ば夢の世界にいた私は妙に凛とした声によって現実に引き戻された。
ベッドを抜け出して声のする方へと歩く。音をさせずに気配を消して歩くのは長年で身についたらしく,誰かが気づくこともなかった。
「いいですか、犬、千種はとにかく並盛生を1人ずつ倒していってください」
「骸ちゃーん、私たちは?」
「M・M達はとりあえず待機していてください。そのうち彼らの方からこちらへ来てくれるでしょうから・・・ね」
「はいはーい!骸さん質問れす!」
「なんですか?犬」
「何ではいないんれすか?」
「ああ・・・あの子はいいんです」
そこまで聞いて、踵を返した。
骸にとって、私はなんなのだろう。作戦にも参加させてもらえないで、何の為にここにいるのだろう。いなくても骸は困らないよね、きっと。私がいる必要なんて欠片も無いんだ。
漠然とそんなことを考えて私はベッドに沈んだ。眠れるわけもなかった。けど骸の足音が聞こえたから寝たふりをした。そして何時の間にか、本当に夢の中に落ちて行った。
「ん・・・?」
「あ、骸。ごめんね、起こしちゃった?」
「いえ、平気ですよ。それより何しているんですか?」
こんな朝早くから荷物なんてまとめて。骸はそういいながらベッドから起き上がり椅子にかけてあった学ランを取ってインナーの上に羽織った。
私は鞄に向かっていた視線を上げて骸を見る。
「??」
「ここを・・・出て行こうと思って」
「!?、何を言っているんですか・・・?」
「私がここにいても、骸の役に立てないから。」
「そんなことないですよ」
「あるの、だから私はここには必要ないわ。骸の足を引っ張ってしまう前にここを出て行く。」
「・・・」
「さよならよ、骸」
くるりと背を向けて鞄に荷物を詰めていく。立ち上がって鞄を持とうと腰を屈めた時、
「どう、してっ・・・!」
ギリ、と歯と歯が擦れる様な嫌な音がした。
「どうして君はわからないんですかっ・・・!」
「ー!」
振り向いた瞬間に壁に貼り付けられる。ギリリ、と音がしそうなほどに両手首は締め付けられていた。自然と痛みに歪んだ顔で骸を見やると何故だか酷く泣きそうな、それでいて怒りを湛えた何とも複
雑な表情をしていた。
「むく、ろ」
「僕の為を想うなら、僕の傍に居て下さい。は傍に居てくれるだけで,それだけでいいんです。僕には、が必要なんです、愛しているからっ・・・!」
骸の顔から怒りの色は消えていた。残ったのは必死で哀しい色。やがて手首は開放され、そのままぎゅっと抱きすくめられた。
「今僕の顔を見ないで下さい。きっと凄く情けない顔をしているでしょうから。」
「そんなことないわ、」
そっと骸の背に手を回して戯言を囁く。けどけして嘘ではなかった。私を求める骸の瞳は酷く愛しく思えたから。
「あいしているわ、骸」
驚いた顔の骸の頬を包み、そっと私は唇を重ねた。