12月4日。
私にとって一年で一番大切な日。
「雅治ー」
「なんじゃ?」
「さて今日は何の日?」
「俺の誕生日じゃろ」
「だよねー?じゃ、何で私はあんたにマニキュア塗って貰ってるのかしら?」
今日は付き合って三年目になる雅治の誕生日。
なのに私は今雅治のベッドに寄っ掛かって足の指に真っ赤なマニキュアを塗って貰っている。
「誕生日プレゼントじゃろ?」
「雅治がそれでいいならいいんだけどさー…」
一年目はちゃんとプレゼントをした。
二年目からは雅治の欲しいものを、ってことで用意はしなくなった。
もちろん今年もそうで、学校が終わって一旦別れてまた雅治の家まで来ると雅治がお願いしたのが、
「これ、塗らせてくれんかの」
だった。
雅治の細い指先にもたれた可愛らしいボトルのマニキュア。
原色の赤が足の指に次々塗られていく。
「雅治塗るの上手いね」
「そうか?」
「うん、じょーず」
目の前でさらさら揺れる銀の髪に指を差し込んで梳くと雅治がちらりと目をあげた。
そしてまた足元に集中する。
何だか寂しい。
自分の足に嫉妬してどうするんだって話だけど…寂しい。
もっとこっちを見て欲しくて、
さらさら揺れる髪に私はそっとキスをした。
「お誕生日おめでとー雅治」
ちょっと驚いたように雅治は顔をあげて、その後優しく笑った。
「ありがと」
ちゅっと音を立てて鼻にキスをした雅治は、マニキュアの蓋を閉めてその辺に転がした。
そして私の横に移動してぎゅっと抱き締めると
「来年もこうやって祝ってな、。愛しとうよ」
と耳元で囁いた。
雅治の誕生日なのに喜ばされてるのは私ばかりで、
少し悔しくなって私は雅治の唇に噛みついた。
目を閉じる瞬間見えた雅治の顔は驚きもせずに笑っていたから、
ああまたペテンにかけられたのだとわかったけれど
誕生日だから黙っていた。
来年も再来年も愛してる。
誕生日おめでとう雅治。
マニキュアの代わりにキスをあげる
Happy Birthday!Masaharu.N