誰かが私の髪を撫でている。
サラサラ、
サラサラ、
優しくて暖かい。
からりとおでこに何かが乗って冷たくて気持ちよかった。
「う…?」
「目、覚めたの」
「恭弥…?」
目が覚めたらそこは恭弥の家で、髪を撫でていたのはベッドに腰掛けた恭弥だった。
「三日間眠り続けてたんだよ、君。怪我で熱出してね」
「あっ…!?」
「馬鹿、まだ起きるんじゃないよ」
起きようとして改めて肩の痛みを自覚して恭弥に寝かされる。
そうだった…
右肩撃たれたんだっけ…。
「ごめんね、恭弥…。迷惑かけて」
「全くだね。君に守られるほど僕はヤワじゃないよ」
「うん…でも私が恭弥を守りたかったの」
「本当に君は馬鹿だね。君が怪我したら誰が家のことやるの」
「そうだよね…本当にごめんなさい」
「僕よりも遥かに弱い君に守られるのは非常に不愉快だよ、」
「恭弥…」
「君は愚かでそして弱くて、男の僕を守るのはお門違いなんだよ。わかってるの?自分の力量を」
恭弥は心底呆れたように目を合わさずに言い放つ。
そこまで言って私の方を見て、
辛辣な言葉とは正反対の酷く優しい手つきで私の髪を撫でた。
「仕方ないから、君は僕が守ってあげるよ、」
口元だけで笑って、途方ないほどの優しい声の恭弥を視界の端に捉えたまま私の思考はまどろみに落ちていった。
「本当だよ、」
「君を傷つけるもの全てから僕が守ってあげる」
恭弥がそんな風に言いながら額に口付けて居たことも知らずに。
step4 怪我による発熱、朦朧とした意識の中で