「雲雀さん!!」

「何?…!!」

見ず知らずの女にファーストキスを奪われた、ある日の放課後。

「何…っ何なの君…!」

「すいませんでした!」

「え…っちょ、君…!」

何で逃げ足だけは速いんだ。

凄い勢いで逃げていったし…
まあ僕が逃がすわけないけどね。

「もしもし草壁?今応接室の方に変な女逃げていったと思うけど捕獲してくれる?」





「やあ、よく来たね。10分ジャスト…よくやってくれたね草壁」

「はっ!失礼致します委員長!」

連れてこられた女は、と言うらしかった。
床に座り込んで俯いている。

…って言ったっけ、言い訳くらいなら聞いてあげてもいいよ」

「…その、私雲雀さんの事が前から好きで…でも告白する勇気がなくて…」

「常識的に考えていきなりキスする方が勇気いると思うけどね。しかも僕の胸ぐら掴んで」

「そうですよね…よく考えたらそうですよね…。ごめんなさい!」

「謝れば全て許されると思ってない?それに僕、ファーストキスだったんだよね。許さないよ、君。」

「ひ…雲雀さん…」

の顔が恐怖で歪む。
泣きそうになりながら僕から目をそらそうとはしなかった。
僕はゆっくり席から立ち上がり彼女の前に一歩ずつ進んだ。
びくりと肩を震わせる彼女の顎をくいっと上げる。
口の端を上げて笑うと困ったように頬を染めて目を伏せた。

「許さないよ、だから君、僕と付き合いなよ」

そう言うと弾かれたように顔を上げて僕を見た。
目に涙が浮かんでる気がするんだけど、気のせい?

「ねぇ、何とか言ったらどうなの。僕と付き合えって言ってるんだけど」

「こ、こちらこそお願いします!」

真っ赤になって頭を下げた彼女が少し可愛く見えたのは気のせいだと思いたい。





本当は知っていたんだ、廊下を通り過ぎるときいつも君が僕を見ていたことくらい、ね。

あんな熱のこもった視線、僕が気付かないわけないだろう?