翌朝の、ことやった。
いつも通り朝の短い時間に話して、が用があるとかで教室を出ていって。
入れ替わりでクラス1うるさいやつが寄って来よった。

「なーなー財前」
「あ?」
「財前ってと付き合ってん?」

何を言ってるのかと思った。あまりに突然で驚いたが冷静を装って付き合ってへんよと素っ気なく返す。

「嘘や〜!俺見たで!昨日自分ら手ぇ繋いでたやろ!」
「は?」
「放課後の教室で、2人っきりで」
「繋いでへん」
「嘘や!繋いでたって!俺見たんやって!」
「せやったらそれでええわ」
「付き合うてへんの?ほんまに?」
「付き合うてへん言うてるやろ」
「せやなあ!財前とじゃ釣り合わへんもんな!」
「…なんやと?」
みたいな地味なんやなくて財前にはもうちょい派手で美人な子が似合うで〜、なんかやもったいないわ!」
「…お前、もいっぺん言うてみ」
「何怒っとんねん。…あ、

時間が止まったんかと思った。振り返った先の教室の戸のところには立っていて、表情は硬直していて何も読み取れない感じで。

「あ、あのな今のは」
「あ、あー!私まだ用事あったんやったわ!ほなごゆっくり、なっ」
!」
「ちょっ財前!」

無理やり貼り付けたみたいな笑顔で言い捨てて走り去るを追い掛けようと立ち上がったら、呼び止められる。
歩き出せる姿勢のまま首だけ振り返ってなんや、と短く言った。

「そんなムキんなって、ほんまにのこと好きなんやないの?」
「…いちいちウルサいわお前小舅かっちゅーねん。好きやったらなんか悪いんか」
「えっ」
「その程度のことでガタガタ抜かすなどアホ。小学生か」
「ざ、財前…」
「今度になんか言ったらその口二度と使えへんようにしたるわ」

早口で吐き捨てるように言って、人がまばらな教室を飛び出した。
うちの学校は真っ直ぐ長方形やからの姿がすぐ見えた。

!」

呼び掛ければ驚いたように振り返って慌てて階段を登ってく。

、待ちぃや!…現役テニス部レギュラーなめんなや!」

走るスピードを早くしてを追い掛ける。
徐々に狭まる距離、近付く終着点。
が屋上のドアを開けた瞬間にその手首を捕まえた。

「はっ…は、待て、言うとる、やろ…」
「何で…追いかけて来たんや…」
「あんな泣きそうな顔しといてよう言うわ、追いかけるな言う方が無理やろ」
「そないな顔してへんわ、気のせいちゃう?」
「気のせいなんかやないわ、鏡で自分の顔見てみい」
「…私は大丈夫やから、手ぇ離して」
「いやや」
「大丈夫やから、な?ひとりにしてや」

泣くのを堪えてるみたいに眉尻の下がった顔で笑って、手が震えとるは今にも消えそうに儚く感じて、無理やり繋いだ手に力を込めて引き寄せる。
の頭が肩に当たって、離れないように開いた手で頭を押さえた。

「ひとりになんか出来るかアホ」
「ざ、財前く」
、」

押さえてた頭を解放して、涙目になってるの頬にそのまま滑らす。

、好きや」

言葉は勝手に口をついて出とった。










ひとりにしてと微笑うきみの、震える手を離すものかと。

(気持ちは勝手に溢れ出す)