「はい雅治、コーヒー」

「ん、ありがとさん」

私の家の小さな赤いラブソファに雅治は座って、雑誌をパラパラと捲っている。
目の前のガラステーブルに雅治のブラックコーヒーと私のカフェオレを置いて、
革張りのそのラブソファに座った。
雅治の隣は何となくいい匂いがして、私は近付きたいような近付きたくないような不思議な気持ちに駆られて、少しだけ距離を取った。
するとそれに気づいたのか雅治がちらりと横目でこちらを見た。
慌てて目をそらしてカフェオレを口に含むと
雅治がさっきまで見ていたテニス雑誌をガラステーブルに置いた。

「…

「何?」

「何で離れるんじゃ」

「気のせいじゃない?」

「そんなことなか」

雅治はじりじりと近寄ってくる。
二人掛けの小さなラブソファには逃げられる場所はなく、
私はカフェオレをテーブルに置いて手で雅治を制す。

「雅治落ち着いて」

「嫌じゃ」

「っきゃ!」

雅治が腕をぐんと引っ張って私はあっという間にラブソファの上に倒される。
学校帰りにうちに寄った雅治はブレザーを脱いでネクタイも取っていたのでシャツとズボンのラフな格好。
覆い被さった雅治の鎖骨がシャツから見えて私は目をそらした。

「何で目そらすんじゃ」

「ふ、深い意味は…」

「…

雅治の顔がだんだんと近付く。
私は無意識に手を突っ張って雅治を止めて、ソファから転げ落ちるように雅治から距離を取った。

「…そんなに、か」

「…え?」

「そんなに俺のこと嫌か」

雅治が小さくため息をつきながら頭をくしゃくしゃしてソファに座り直す。
諦めたように上着を拾って鞄に雑誌を戻す。

「ま、雅治?」

「帰る」

「何で?」

「お前さんがそこまで嫌がっとるのにおれん」

「ち、違うの!嫌なわけじゃないの!違うの!」

「じゃー何じゃ」

「雅治、色気が凄いから、ドキドキしちゃって…だめなの」

「…」

「お、怒ったよね…ごめんなさい」

ちらりと雅治を見ると雅治は座ったまま俯いていた。
怒ってしまったのだと、私も罪悪感から俯く。

「…全くお前さんは」

「ご、ごめ」

「可愛くて仕方ないの」

「え?」

顔をあげると雅治はいつもみたく優しく笑っていた。

「…怒ってないの?」

「怒ってなか、…おいで」

雅治はソファに座ってそっと手を広げて私を呼んだ。
そろそろと近付くと腕を引かれて雅治の腕の中に閉じ込められる。

が可愛すぎてどうにかなってしまいそうじゃ」

ぎゅっと私を足の上に乗せたまま抱き締めて肩に額を押し付けてくる雅治に、
ごめんの意味を込めて頬にキスをした。
雅治は顔をあげて少し骨ばった手で優しく私の頬を撫で、そのまま唇にキスを降らせた。

赤いラブソファに銀色が散る。

私達はそのままラブソファに沈んでいった。










に散る光彩










(仁王においでって言わせたかっただけって言う)