誰がために華は咲く











「…

「あ、ヒノエくん…」

鮮やかに艶やかに、桃色の着物に身を包んだがそこにいた。

「どうしたんだい?そんなに美しくなって」

部屋に入り、の白い手に口付けた。

「あのね、披露宴の衣装なんだって」

「披露宴?」

「ほ〜よく似合ってんじゃねぇか、嬢ちゃん」

「あら?ヒノエも来てたのね」

「お義父さま!お義母さま!」

がそう呼ぶと母さんが嬉しそうにの隣まで歩み寄った。

「どう?ヒノエ。この着物よく似合ってるでしょう?」

「ああ。よく似合ってる」

「あれは母さんが披露宴のために誂えたらしいぜ?」

いつの間にか隣に立った親父がオレにそう言う。
それを聞いてが焦ったように口を開いた。

「あっあのね!私は一応遠慮したんだけど…」

申し訳無さそうに言うに母さんが負けじと反論した。

「いいのよ、だってさんは私達の娘になるんだもの」

「は、はい…」

母さんの言い分にはたじたじだった。
普段のあの凛とした表情の欠片もなくてオレは思わず吹き出した。

「ヒっヒノエくん!?笑わないでよ!」

も笑われた理由がわかったのか反論してくる。

「ははは!悪い悪い!でも本当よく似合ってるよ、姫君」

すると母さんは満足気に大きく頷き、
は赤くなってうつ向いて、
親父はおかしそうに笑った。

「あの…お義母さま…」

「なあに?」

暫くするとが申し訳無さそうに母さんに声をかけた。
母さんが答えるとますます申し訳無さそうにうつ向く。

「あの…もうこの着物脱いでもいいでしょうか?」

「えっ!そんな!」

残念そうに母さんが声を上げる。
確かに残念だがまた披露宴の時見れるし、何よりが窮屈そうにしているのでオレは助太刀をした。

「いいだろ?母さん。お楽しみは当日まで取って置いた方が」

「それも…そうだけど…」

まだ母さんは納得いかなそうだった。そこに親父が助太刀をいれた。

「ほら、若いもん同士話すこともあるんだろうよ。オレらは邪魔だよ、母さん」

ぽん、と母さんの肩を叩いて部屋から連れだした。
母さんはまだ残念そうだったが親父が有無を言わさず連れていった。
ぴしゃりと襖が閉められ、部屋には二人きりになった。

「ありがとう、ヒノエくん。助かっちゃった」

が笑いながら言う。髪を耳にかける刹那。
着物から覗いた白い腕を掴んで軽く口付けた。

「ひゃっ…!?ヒっヒノエくん!?」

少し戸惑ったをそのまま腕の中に閉じ込めた。
のいさめるような声が聞こえたけど気にしない。

「着飾ったお前を誰にも見せたくなかった。それだけだよ」

は照れながら馬鹿、と呟いた。





今暫く、お前はオレだけのもの。