夢にまで、見る。

焼けつくような鮮やかな赤。

堕ちていく。

記憶に残るは、

赤の夢―――――





パチ、とは目を開けた。
チュンチュンと聞こえる雀の声。窓からは明るい日差しが入り込み、朝の訪れを告げていた。

「ゆ、め…?」

はあ…と息を吐いて額に張り付いた前髪をかきあげる。
夢にまで見るなんて、どれだけ彼に捕われているのだろう、と驚き呆れた。

「いるわけ、ないよね…」

ここは見慣れた筈のの部屋。眠っているのはいつもの自分のベッドで。

「帰ってきたんだもん…」

重たい体を起こして、頭を抱えた。脳裏に浮かぶのは鮮烈な赤。

「あいたい、」

首にかけたままの白龍の逆鱗を出して呟く。

「あいたい、ヒノエくんっ…!」

ぎゅっと握りこんでうつ向いた。目から溢れるのは―涙。
白龍の逆鱗が光る事は、もう無い。帰るために溜めた全ての力を使い果たしてしまった。
もう彼に会うことも、無いのだ。

「ヒノエくんっ…」



「っ…!?」

、』

「ヒノエくん!?いるの!?この世界に!」

自分以外誰もいない部屋で、は声を上げる。
しん…と静まりかえった部屋。

誰の答えも、返って来ない。

「そう…だよね。いるわけ…ない」

はは…と乾いた笑いを溢しては呟く。
そのまま倒れこむようにベッドに横たわり顔を隠してボロボロと泣き始めた。

「うっ…つぅっ…ふっ…」

そしてそのまま彼の人を想いながら夢に落ちた。





…」

頬に出来た涙の後をつう…と指でなぞる人がいる。

「お前を探して…ここまで来たよ…」

頬を撫でて、そっと唇を寄せる。

「もう…離さない」

目の前に夢にまで見た赤の彼がいることを、まだ彼女は知らない。